2022.03.23
【MIRAI HR TIPS】人権デューディリジェンス(人権DD)
最近、「人的資本」や「人権デューディリジェンス」といったワードをよく聞くようになりました。これらを企業価値の向上にどのように活用していくのか注目されています。
「人的資本」とは・・・
企業の無形資産の一つとされます。人材を資本としてとらえて、その資本価値を最大限に高めて企業価値の向上を実現する経営の在り方を人的資本経営といいます。
人的資本はESG投資における投資評価項目の一つでもあります。最近では特に注目されているワードの一つです。
「人権デューディリジェンス」とは・・・
企業が自社の従業員だけでなく、取引先や顧客など、サプライチェーン全体において人権侵害が行われていないかを把握するための調査のことです。企業は直接的にも間接的にも人権侵害に関与しないようにしなければなりません。
こちらも特に注目されていて、政府は2022年夏頃に指針を作り、法制化によって人権デューディリジェンスを義務付けることも考えています。
今回は「人権デューディリジェンス」について話を進めていきます。
そもそも企業と人権はどのような関係にあるのでしょうか。
先進諸国が発展途上国に事業展開することで強制労働や児童労働などの問題が発生した例があります。このような問題により、企業は訴訟やレピュテーションリスク、不買運動、SNS炎上などのリスクを負うことになります。
企業は、このようなリスクを回避することはもちろんですが、社会貢献の一つとして人権を尊重した事業活動を継続していく必要があります。
社会貢献の観点からは、「SDGs」や「ESG」とも深い関係にあります。法務省では、SDGsの目標は全て「人権の尊重」を含んでいて、人権はSGDs全体を支えるフレームワークであるとされています。また、ESGの「S(Social:社会)」には労働分野における問題などの人権課題が含まれるとされています。
いま、企業はステークホルダー(消費者や労働者、取引先など)から人権尊重に関する課題への対応を求められています。
人権尊重に関する課題(企業が尊重すべき人権の分野)には主に次のような項目があげられています。ここでは、労働に関する課題を中心にピックアップしてみます。
・賃金の不足・未払、生活賃金
・過剰・不当な労働時間
・労働安全衛生
・パワハラ、セクハラ、マタハラ
・強制労働
・外国人労働者の権利
・児童労働
・ジェンダーに関する人権問題
・サプライチェーンの人権問題
人権尊重に関する課題(企業が尊重すべき人権の分野)は全部で25項目ありますが、このうち半分以上がこのような労働に関する課題です。
このような人権課題において、人権に及ぼす悪影響(負の影響)を防止し、軽減する具体的な方策の一つが「人権デューディリジェンス」です。
「人権デューディリジェンス」では次のことを実施します。
① 人権への影響評価
② 顕在的、潜在的な負の影響に対する予防、是正措置の実施
(研修教育の実施、社内環境制度の整備、サプライチェーンの管理)
③ モニタリング(追跡調査)の実施
④ 外部への情報公開
このように、「人権デューディリジェンス」では、人権への悪影響を調査して、社内環境の整備や研修教育を通して悪影響を防止軽減し、さらには再発防止のためのモニタリングを行うことが求められています。
特に労働問題に関する人権侵害については、専門家である社会保険労務士と一緒に「人権デューディリジェンス」を実施することが効果的です。
人権に関する取り組みが評価されるいま、「企業価値向上」のための「人権デューディリジェンス」に是非取り組んでいきましょう。
【 人権DDセルフチェックシートの活用 】
労務コンプライアンス協会では、人権DDに取り組むきっかけとなるツールとして【人権DDセルフチェックシート】を無料で配布しています。
この人権DDセルフチェックシートは、企業が顕在的・潜在的に抱えている「人権」に関するリスクのうち労務分野における課題について、セルフチェックや事例の把握を行うことで、認識・理解を深めることを目的として作成したものです。
セルフチェックシートをご利用いただき、まずは労務分野における課題に重点を置いて人権DDに着手することで、人権への対応について効果的に取り組んでいただけるものと考えております。是非、ご活用ください。
→次回のテーマは「人的資本と企業価値の向上」
(公開までしばらくお待ちください)