人的資本経営

2022.06.28

【MIRAI HR TIPS】最近注目の“人的資本”とは

 最近、「人的資本」という言葉がキーワードとして取り上げられることが多くなってきました。「人的資本」は無形資産の一つとして、企業価値を構成する最も重要な要素の一つとされています。
 「人的資本」は、消費されるコストと考えられる「人的資源」と異なり、利益や価値を生むコスト(投資)と考えられています。
 これまでの企業価値は、工場や設備等の有形資産の占める割合が高いといえましたが、これからは特に人的資本を含む無形資産の割合が高くなっていくと考えられます。

■コーポレートガバナンスコードでの扱い
 上場企業に求められている「コーポレートガバナンス・コード」においても、「人的資本」への投資等に関する記載が追加されています。
 コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめとする顧客や従業員、地域社会等の立場を踏まえたうえで、迅速果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。
 「コーポレートガバナンス・コード」は実効的なコーポレートガバナンスの実現に必要な必要原則を取りまとめたものです。

■人的資本経営とESG投資
 「人的資本経営」とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方をいいます。
 「人的資本」は、「ESG投資」における投資評価項目の1つとしても考えられ、このうちの「S(Social=社会)」の部分として、特に将来の企業収益につながるものとされています。
 ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮した投資のことをいい、企業の収益創出の機会を評価するベンチマークとして注目されています。

■海外の動き
 2021年6月に、米国の上場企業に対して人的資本の情報開示を求める法案「Workforce Investment Disclosure Act of 2021」が米国下院を通過しました。
 この法案では、人的資本に関する具体的な8つの開示項目を義務づける内容となっており、各項目の開示基準についてはSECが策定することとなっています。
 また、この法律の制定後2年以内に、各項目の開示基準が策定できなかった場合には、「ISO 30414」を開示基準として使うことについても明記がされています。
 「ISO 30414」とは、国際標準化機構(ISO)が公表した、人的資本に関する11の領域と58の指標について定めた情報開示のガイドラインです。

■日本国内の動き
 日本国内においても、人的資本の情報開示指針の検討が進んでいます。2022年5月には、政府が同年夏頃を目途に、企業に対して人材への投資に係る項目の経営情報を開示するように求め、企業が労働者を「人的資本」ととらえて投資しているか否かを投資家が判断できるようにするとされました。項目のうち、一部については、2023年度にも有価証券報告書への記載を義務付けるとされました。(参照引用:日本経済新聞)
【主な19項目の例】
・リーダーシップ
・エンゲージメント
・人材維持
・精神的健康
・労使慣行(コンプラ)
・賃金の公正性

 「人的資本」が全ての企業の事業活動に様々な影響を及ぼすものと考えられますので、これからは特に注目していく必要があります。
 一度にすべての対策をするのはなかなか大変ですので、できるところからひとつずつ取り組んでいくことをおすすめします。

以上